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季刊エスVol.82読了感想と掲載告知

  • 執筆者の写真: 削木
    削木
  • 2023年7月10日
  • 読了時間: 7分



ご無沙汰しております、管理人の削木です。 もうじき梅雨が明けたのでしょうか、日差しと湿気の厳しい蒸し暑さが本格的になって参りました。皆様いかがお過ごしでしょうか。

大変遅くなりましたが、6/15に季刊エス最新号Vol.81が発売されたので、読了感想と掲載告知でございます!月を跨いでしまい申し訳ございません、お待たせしました…! 相変わらず自分の偏読した感想なので感想が偏っております。今回は大きなテーマとコラムについてしか綴られていませんが、普通に記事の内容について書かれてるので未読の方はネタバレご了承くださいませ。



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今回表紙を飾って下さったのは「約束のネバーランド」の作画担当で有名な出水ぽすか先生!巨大なジョーズのような海龍のような生物と大舟が合体したような怪物を中心に、荒々しい波と広がる大空の青さが壮大なスケールを感じさせます!今回のテーマが「廃墟・楽園・都市」なのにもなぞらえて、出水先生のイラストにも沢山の町や機械、工場、人々や怪物の「暮らし」や生活感の溢れる「空間」が織り込まれていますよね。私も出水先生の画集を持っており、壮大な空間表現とキャラクターの動きや背景をいつも参考にしております。


インタビューでも出水先生は青とオレンジの色を基調としたイラストをよく描いちゃうと呟かれており、今回の表紙も空と大海原の青色と、太陽光やキャラクターの健康的な肌に見え隠れするオレンジ色のコントラストが映える印象があったのも頷けました。また、経歴を聞くと教育系美術の学校を中退して美大に入り直してそこから絵を学んだとのこと。絵の仕事に打ち込むようになったのもその時期だったとか。ただ、生きた経験は美大での絵の勉強だけでなく、教育系の大学で得たものも大きかったらしく、所属したサークルの出会いや絵画教室で子供と触れ合う機会も多くなりそこから児童向けの作品を描こうという気持ちも高まっていったそうです。「約束のネバーランド」で主人公エマを始めとする子供たちが力いっぱい駆け回り、時には幼さや無垢さ、苦悩して涙する表情も見せる、そんなキャラクターの魅力を存分に描写できるのは、実際に子供たちを観察したり話をして考え方や行動力に影響を受けたりといった経験に裏打ちされているからこそなのだなとインタビューを読んで納得しました。


そして出水先生のメイキングも圧巻です!鉛筆で引かれたアナログ線画をスキャンし、その上にデジタルで加筆し、影を塗り、その上に固有色を乗せ、一度見直してまた加筆を繰り返し、光を描写する、その繰り返しで徐々にキャラクターやモチーフに重厚感が足されていく……細部まで堪能できるドラマティックな絵画はこうして完成されるのだなと痛感しました。目を凝らしてみるとキャラクター一人ひとりにも表情がコロコロと可愛らしくついており、遊び心も感じられます。一枚の絵の中に無限の世界とドラマを生み出す出水先生ならではでした。




今回「楽園・都市・廃墟」がテーマということで、自然溢れる風景や人々の日常生活の一枚を切り取ったような街並みの様子を描く、風景絵師様のインタビューが目白押し!



生活感と外の光が融合したイラストで有名なならの先生は、躍動感のある画作りのために光と影の色にこだわったりパースツール以外の部分は手描きにしたり、線と色彩の面の部分に細かく気を遣われていました。二年前に行った台湾の風景も大きく影響しているそうです。


鮮やかな色彩と広大な風景を描くShan Jiang先生はイラストを描く際に「未来と現在と過去」という時間軸のテーマを添えることが多く、「空間は常に変化し続ける」という考えを乗せているとのこと。


レトロな色合いや異世界感、ノスタルジックな雰囲気が持ち味のちゃこたた先生は、所々に配置された小物や空間に落ちる薄暗い影と光の演出がリアリティを持たせているのが魅力的でした。実際にちゃこたた先生は沢山の資料を一枚のイラストに描き起こしてインプットしたりすることが多く、そのように空間における登場人物と背景の関係性を忠実に繋げていることがリアリティに生かされていると感じられました。


漫画家のpanpanya先生は不思議な世界を描く際には、「見慣れた日常にあるものもよく観察して描くことで、敢えて手間をかけて描かれたものとして得体の知れなさや異質さを演出できる」ということを意識しているのだそうです。panpanya先生の可愛らしいデフォルメタッチのキャラクターに、敢えて緻密でリアルなものを配置することで不可解さを見せるテクニックには脱帽でした。



今号のテーマ「楽園・都市・廃墟」の写真コレクションには世界各地の美しい風景写真が散りばめられていました。南の島や湖畔や原生林や花畑などの「楽園」のような壮大な自然の風景、人が夢にまでみる理想の近未来のようなビル群の集合体の「都市」の風景、過去に起きた人間同士争いや災害の悲惨さや叡智の築き上げた文化の軌跡を残した遺跡なテーマパークの跡地の「廃墟」の風景……。どの写真も、息を吞むほどの美しさがありました。私も風景の写真集は何度か読んだことがありましたが、このテーマに沿って集めた写真は「人間の生活と時間」と密接な関わりを暗喩しており、少し悪寒のするような不気味さや得体の知れない異世界のような異質さも感じられました。写真と合わせて掲載されていたコラムにも、「楽園」は人間が労働の苦しみや喧噪から解放されるゆったりとした永遠に開放された空間であり、「都市」は人間が「共同体」という社会システムを動かすための「機能体」を合理的に組み立てた集合体であり、「廃墟」はその社会の機能を停止させ置き去りにされた「休止」の場所、そんな言葉が綴られていました。それらの言葉を踏まえると「楽園・都市・廃墟」は「現実の時間から離れた異世界・現代と未来を生きる舞台・人の営みの終わった過去の軌跡」という風にも置き換えられ、先程呟いた「人間の生活と時間」と密接な関わりが感じられたのはそのためだったのかもしれません。



今読み返してみると、写真を眺めていた感じた非現実的な精神的トランス状態を覚える違和感は、ならの先生の人間の生活感のある空間と自然の光の融合、Shan Jiang先生の「未来と現在と過去」という時間軸のテーマを添える意識、ちゃこたた先生の小物のリアリティの追求、panpanya先生の、敢えて緻密でリアルなものを配置することで不可解さを見せるテクニックに通じるものがありました。「楽園・都市・廃墟」は空間と時間のモチーフでありながらこれほど官能的な魅力を感じてしまうのは「人間の生活と過ごした時間」に密接に関わっているからかもしれないと、ふと思いました。




さて、話題は変わりまして、ここからは掲載告知です!



StarSは今回も投稿者様からの力作が勢ぞろい!相変わらず、目を奪われる作品ばかりです…!



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今回なんと!5月のRECTO VERSO GALLERY様のグループ展でも展示した『LIME GREEN DREAM』が、佳作に選ばれました!編集部様ありがとうございました!コメントまで頂けて、感無量でございます…!炭酸とジンジャーライムに着目してもらえて嬉しい限りです!柑橘類の輪切りや透明なボトル、泡のエフェクトなど爽やかなモチーフ詰め込むの大好きだったので選んでもらえて、光栄です。これからも精進して執筆するぞ…!

今までスモールエスや季刊エスに投稿してきましたが、アナログだけでなくデジタルに触れていくうちに描き方塗り方も大いに変化したのかなと今までの作品を見返して感じる今日この頃です。また、グループ展を通して、人に見せるイラストを意識できるようになってきたのかなと実感しました。



次号に向けても制作が終わりそうなので進捗をチラ見せ!今回欲張ってStar SとSpace S両方に投稿してみることにしましたが……デジタルカラーとアナログモノクロのフルサイズの進行は大変でした!やり直しがきかなかったり切りの良いところで終わらなかったり…でもどちらのイラスト執筆も大好きなので、ひたすら修行あるのみですね!



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そして投稿とはまた別の告知ですが、今回9月に向けてまたグループ展に参加することが決定しました!今度は違うギャラリーさんでの展示ですが、面白いテーマなので筆を走らせていきます。新規イラストも制作中ですので、進捗を少しほど。



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次にお会いするのはおそらくスモールエス最新号の読了感想かと!今度のスモールエスは7月20日に発売予定だそうです!あと二週間もしないうちに発売ですね……!次はどんな特集が来るかドキドキです!


またお見かけしましたらよろしくお願いします! ではでは! 2023.07.10 削木

 
 
 

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©2020.06.01 削木

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