季刊エスVol.78読了感想とイラスト掲載告知
- 削木
- 2022年6月21日
- 読了時間: 7分
更新日:2022年7月1日
こんにちは、梅雨が明けたような明けてないような鬱々とした天気で蒸し暑さが続いてますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。何とか身体は元気な管理人の削木です。
さて、6月15日に発売した「季刊エスVol.78」が発売したので、読了感想と自身のイラスト掲載のお知らせです!読了感想なのでまだ季刊エスを買われてない方はネタバレご注意願います!今号は望月けい先生の仄暗くカッコイイスタイリッシュなイラストが目印です。相変わらず管理人の偏読っぽい記事なので取り上げられてない記事もありますがご了承ください。

今号の季刊エスは見出し文が「破壊するために愛を。破壊する前にすべてからの自由を。」というフレーズにあったように様々な作家さんからのインタビューの話題や作品のテーマがところどころ闇を持っていたりアウトローのような世界観について触れられていたので読み応えがありました。自分の今の生活も求職中なので色々とメンタルの支えになりました。後述でも少し綴ろうと思います。
表紙に描かれた望月先生のイラストも「破壊・愛・自由」がテーマなのだそうで。メイキングを見ると主線はモチーフごとに分けてレイヤー分けしたり境界効果でフチを足したりして、シンプルな色使いにちょっとしたひと手間を加えた線画でデザインとしての見ごたえも与えていたのでそこが勉強になりました。自分もデジタルの描き方は未だ模索中なので……。また、望月先生ご本人のインタビューにも「破壊と愛」は人生のテーマで、絵は攻撃手段であり威嚇攻撃なのだと綴られており、不当な扱いや分かってもらえないときは絵で分からせる、というのを学生時代からのポリシーとして持っていたそうです。でもその殺傷力のありそうな衝動を、世間が目に留める一枚絵として昇華して生み出せる馬力は勇ましくてカッコイイと個人的に思いました。表紙のキャラの睨むような上目遣いと手元のハンマーが静かな苛烈さをより鮮明に映してくれています。
メイキングも面白かったのですが、幾原邦彦監督との対談コラムも面白かったです!幾原監督といえば『輪るピングドラム』『少女革命ウテナ』『ユリ熊嵐』『劇場版セーラームーンR』等を手掛けた監督なので、作品に対するテーマやキャラクターの動かし方についてなど舞台裏が読めて「自分が青春時代にお世話になった作品にはその意図が…!」と感じてテンション上がりました。幾原監督のインタビューによると、ピングドラムでは主人公たちが上(親)の世代がまき散らした「夢」と「毒」を越えていく姿を描きたいみたいなとこともあったらしく、望月先生自身も創作に関しては「孤独感」を感じることもあり、「怒り」を元に反抗的な絵を描くということもあり、二人のインタビューからは、ある種、今ここに在る世界への反抗、上の世代の生み出したもの全てが必ずしも正しいとは限らないことへの認識、破壊と再生、など「破壊・愛・自由」につながる話題が出てきました。『輪るピングドラム』も登場人物同士の愛が繋ぐ作品なので……。幾原監督は時代によって描きたいものが変わってくるともインタビューで綴っていましたが、上の世代の生み出したもの全てが必ずしも正しいとは限らないことへの認識、というものは今の時代には結構大事なんじゃないかなと思いました。自分の頭で常に考えて行動すること、それが世界を作ること、お二方のインタビューを拝読して実感しました。
他のビジュアルアーティストさんのインタビューも読むと、どの先生方も自分の好きなものと取り入れたいコンセプトを軸にして表現活動されてることがひしひしと感じられました。
MON先生の作品には「死」を連想させるような闇の黒と人物の肌の乳白色のコントラストが活きていること、ろるあ先生はライティングの設定による光と影、Daken先生のキャラクターのファッションデザインにはキャラの内面性と自分のフェチを活かすこと、くろうめ先生は作品の配色に蛍光色と反対色の追究をしていること、米室先生の白髪キャラに裏付けされた曲線と「静と動」の要素、ああもんど先生はメカと女の子ような有機物と無機物の組み合わせにロマンを感じていること、ハムスターの息子に産まれて良かったさん(略してハ息子さん)の作品は女児の生き辛さを作品のユーモラスにして訴える力、トウフさんはダークなテーマ様々な画風のイラストや自身の非現実的な白一色の様相のファッション、烟(kemuri)さんは学生の頃からコスプレイベントに参加したり自身の写真でビジュアルアートを続けておりました。中でも「絶対に最高の状態で棺桶に入りたい」という言葉があり痺れました。
どのビジュアルアーティストさんも、自分の「好き」と一本道を作品にしっかり抽出、表現されててブレない信念がインタビューから伝わってきました。また、テーマの要素として光と影や静と動、白と黒などといったコントラストや対比要素をバランス良く取り入れていることも見受けられ、創作の参考になりました。対比構造って結構大事…!
それから今回個人的に面白かったのが「中村祐介のシゴトバ探訪」の金風呂タロウ先生のお話でした。金風呂タロウ先生はホラー漫画家さんなのですが経歴が面白かったです。元々刺青の彫師を目指して弟子入りしたけれど、実際は彫師は客商売で依頼するお客さんも不良のヒエラルキーだからアウトローの方々が多くて、コミュニケーションの点で疲弊しそうだから辞めたのだそうです。それから自分の描きたい絵を描きたくてホラー漫画家としてデビュー、以降漫画を描き続けているのだそうですが金風呂先生の絵柄を見ると独特なんですが点描な繊細なグラデーションが施されていて、ホラー演出としてのグロテスクな表現を底上げしていて「なるほどー!」と納得しちゃいました。刺青の彫師を目指していた経験が活きてるのかな~とふと思いました。金風呂先生の本は読んだことないのですが、今度探してみようと思います。
先ほど綴ったメンタルの支えについてですが、「アレはやっちゃダメ」とか「コレをしなさい」とか禁止命令、行動命令を出されたり子供の頃に過剰に制約がかかってたりしてその反動が大人になって現れる、みたいな話をよく聞くのですが実際今の私自身もそんな感じです。ちゃんと働いてお給料稼がなきゃとか(お金がないと困るし働かないと罪悪感もあるのは事実ですが)、会社の社則には従わないととか、学校の規則に乗っ取って大人しくしなきゃとか、テストで良い点とらなきゃとか、社会や学校のルールで縛られ続けてた心のストレスを日々の行動でごまかして見ないようにしてたのでその反動でアウトローの求職者になったって感じです。でもアウトローになったお陰で今は自分と向き合う時間や読書やジョギングの楽しみ、創作に費やす時間もできたので一日でも長く生きてやるをモットーに生き残れてます。なのでこういう闇を題材にしたり作品の制作過程がアウトローの実情に絡んでくる話を聞くとホッと一息つけます。これが先ほどのメンタルの支えになった理由でした。
さて、話題は変わりますが今号の季刊エスのカラーイラストコーナー「Star S」にはイラスト「夏じゃん?」掲載させて頂きました!ありがとうございます!こちらのイラストは当サイトのgalleryでも閲覧することができます。


背景の入道雲と向日葵は色んな画集を引っ張り出したり過去の季刊エスやSS(スモールエス)を読みふけって研究して描いたので苦労しました!自然背景ももっと勉強が必要ですね…!ビキニ少女の水滴は描いてて楽しかったのですがもう少し色っぽくしたかったなというのが心残りです。引き続き精進します。
今号の「Star S」「Space S」も彩り豊かなイラストが勢ぞろい!なんと今回の金賞は以前スモールエスで水彩メイキングを紹介してくださった蘆屋マキさんのイラスト!儚い桜と楚々とした少女二人が透明感溢れる美しいイラストなので是非その目で確かめて頂きたいです…!!ほかにも優子鈴さんやpotatoさん、すきっぱねずみさんなどスモールエスでおなじみの投稿者さんのイラストも掲載されているので気になった方はお手に取ってみてください……!
そして次号の季刊エスに向けての進捗を少し。今回は一緒に作業通話してくださったTwitterのフォロワー様がいらっしゃったので作業が捗りました!少し早めのピッチで進められそうなのでこの調子で頑張るぞ!

次のブログの更新はおそらく7月発売のSS(スモールエス)Vol.70の読了感想になるかと思います。
今日は夏至の日でした。ここから先は日が短くなり暑さも増してきますが、皆様くれぐれも熱中症には油断せずに気を付けて過ごされてください。
ではまた!
2022.06.21 削木
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